ビール基礎知識

まずはビールの歴史を知ろう

■ビールの起源■ いまからおよそ5500年前。これがビール造りの最も古い記録のようです。メソポタミア文明の楔形文字にこの記述がみられるほか、ほとんど時期を同じくしてエジプト文明の壁画にもビール造りの様子が描かれています。 もっとも、麦の栽培がはじまったのは8500年ほど前ということなので、記録には残っていないだけでさらに昔から造られていたかもしれません。


■初期のビール■ 苦み、香り成分のあるホップはまだ使われておらず、今とはだいぶ様子が違う実に味気ないものであったと想像されます。嗜好品というよりも、食料の一つという位置付けであったようです。

■ホップが使われはじめた■ 8世紀ころのバイエルン地方だといわれています。この発明によって、ビールに苦み、香り、そして殺菌作用がもたらされました。このホップを使った醸造方法がヨーロッパに広がり、ビール製法の定番になりました。

■日本にビールがやってきた■ ビールが伝来したのは江戸時代初期。当時国際的な貿易都市であった長崎平戸に入ってきたのがはじまりと言われています。江戸の末期には日本でも醸造が試みられ、明治初期には文明開化とともに本格的なビール造りがはじまりました。数多くの地ビールメーカーが誕生しましたが、ビールに酒税がかけられるようになると大手企業に集約され、現在の5大ビールメーカーへと引き継がれています。

そもそも、ビールってなんだろう?

■ビールとは■ 葡萄から造るお酒がワイン(葡萄酒)であるように、大麦(麦芽)から造るお酒がビール(麦酒)。ホップに由来する苦味と香り成分、炭酸ガスによる泡立ちが特徴のアルコール飲料です。
基本となる原料は大麦(麦芽)・ホップ・酵母・水。大麦を発芽させた種子[麦芽]を粉末にし、水に溶かして加熱した液体[麦汁]に、ホップを加え、ビール酵母により発酵させた醸造酒、これがビールです。


■エールとラガー■ ビールは酵母の違いにより「エール」「ラガー」の2種類に大別されます。ラガー酵母から造られるビールがラガービール、エール酵母から造られるのがエールビールというわけです。ではそれぞれの平均的な特徴を簡単に説明すると……
ラガービール:
一般的にすっきりとした味わい。エールに比べ低温(15度C以下)で発酵するため、エステルという果物に似た香りの物質が少ない。
ラガー酵母は発酵が終わると下に沈む性質があり、ラガービールのことを「下面発酵ビール」とも言う。
日本の大手ビールメーカーの商品はほとんどがラガーである。
エールビール:
一般的にフルーティーな香り。ラガーに比べ高温(18〜24度C)で発酵するためエステルが多く含まれ、香りが強い。
エール酵母は発酵が終わると上に浮く性質があり、エールビールのことを「上面発酵ビール」とも言う。
エールはイギリス、ベルギーで主流とされる。なおイギリスでは香りを楽しむためにあまり冷やさないで飲むことが多い。

ビールができるまで

大麦がビールに生まれ変わるまでには、製麦・焙燥・仕込・発酵・熟成・ろ過・殺菌という長い長い道のりが待っています。それぞれの工程に工夫をすることで、無限の味が生まれてきます。ここでは、平均的な製造工程をご案内いたします。ビール造りの苦労を知れば、一口一口が大切に味わうようになれるはず。これぞビール評価の第一歩!

■1.製麦(4日〜1週間) まずは原料の大麦を発芽させることからはじまります。大麦を40〜60時間程度水につけ、芽がでかけてきたら水から出して4日〜1週間くらい芽を伸ばします。
麦には長い冬を越すための栄養であるデンプンがたくさん含まれています。春になり芽を出すときに、デンプンからエネルギーを生み出すアミラーゼという酵素がつくられ、このアミラーゼがデンプンを糖に分解します。このように、大麦の中のデンプンを糖に変える準備、つまり[糖化]が、ビールの発酵には重要となるのです。

■2.焙燥 芽の長さが、体の長さになるかならないかといったところで成長をとめます。これ以上成長するとビールになる原料が少なくなってしまいます。そこで、麦芽を高温で乾燥させてしまいます。これを[焙燥]といいます。 ちなみに、焙乾の温度が高ければ色の濃いビールができあがります。

■3.仕込(1日程度) 焙燥させた麦芽を今度は粉末にして、50度C位のお湯につけます。その液体をろ過し、デンプンや酵素を抽出します。これを[麦汁]と呼びます。
次に麦汁を50度Cくらいに温め、1時間ほど待ちます。ここで麦芽の中に含まれる蛋白を分解させます。さらに温度を67度Cくらいまで上げ、また1時間ほど待ちます。アミラーゼが一番活発になる温度なので、アミラーゼに思う存分デンプンを糖に変えてもらいます。アミラーゼの活躍が終わったら、温度を78度Cまで上げ、アミラーゼの働きを止めます。
このあと麦汁を煮沸釜に入れ、1〜2時間のあいだ、100度Cの高温で煮沸します。そのときに苦味成分である[苦味ホップ]を入れます。ここで、苦味を十分に引き出すのと同時に、蛋白を固まらせて完全に取り除きます。
煮沸が終わったら、香り成分であるアロマホップを入れてあげます。


■4.1次発酵(1週間程度) いよいよビールになるためのアルコール発酵の段階です。
麦汁を発酵タンクに移し、酵母を入れます。ラガービールなら5〜10度C、エールビールなら18〜22度Cの温度で発酵させます。アルコール発酵は半日の間で酵母が増殖し、1日後には二酸化炭素の気泡が表面を覆います。やがて1週間もたてばクリーム状の泡が多い尽くします。
1週間が過ぎ、1次発酵が終わったら、温度を下げ、酵母の働きを止めます。ラガー酵母なら下に沈み、エール酵母なら上に浮かんできます。役目を終えた酵母を残して、できたばかりのビールを2次発酵させるためのタンクに移します。

■5.2次発酵 ここからは熟成期間に移ります。この期間にはタンクから二酸化炭素が排出されるのを止め、ビール内部に炭酸ガスが溶け込むようにします。この炭酸ガスがまさにビールの泡になります。十分に熟成させたら、まだ残っている酵母をろ過で取り除き、低温殺菌をして出来上がりです!

ビールの種類を教えて!

ビールの種類と書きましたが、ここで書く種類とは日本における規格についてです。アルトビールとかヴァイツェンといった(ご存知の方もいらっしゃると思いますが)、いわゆるビールの味の分類ではありません。

日本ではビールを分類する上で、基本となる法律があります。それが酒税法です。 ビール、発泡酒、第3のビール、第4のビール、これらはいずれも法律上の規定に沿って分類されています。酒税法とはお酒にかかる税金と、お酒の製造/販売免許に関して定めた法律です。これよって分類され、税金の課税額も決まっています。ちょっと話がそれますが、日本の場合ビールに対する課税率は外国に比べて高いようです。売値の半分近くが税金なんです。。。 ちなみに、酒税法上、お酒とは1%以上のアルコール度数のものを指します。なので1%未満のビールはお酒とはならず"ノンアルコールビール"とか"ビアテイスト飲料"などというカテゴリで販売されています。

さて、そんな日本のビールですが、主に原料の違いとその割合によって分類がされています。

原料と割合
今現在のよく聞く分類は、上記で言うと、

ビールの分類

その上で、税金がいくらかかってくるかと言うと、

350mlでの税金

発泡酒や第3のビールといったものが生まれた理由は、まさにこの税金の安さにありました。10年以上前は発泡酒の課税額は今よりも10円以上安く、ビールに比べて割安感が今よりもありました。しかし、そこに目をつけた国はたびたびの法改正で発泡酒の増税を進めました。その結果、割安感が薄れ、更に安い税金であった第3のビールにメーカーはこぞって目をつけたわけです。なお、2006年5月の改正では発泡酒の増税のおかげで発泡酒自体の売り上げが落ち込み、税収が減ってしまったという国にとってもメーカーにとっても良くない結果となったそうです。 そして、第3のビールです。これは確かに安いのですが、いかんせん味がよろしくない。BeerDo!!でも辛口な評価を書かれてしまう商品の多くは、この手のジャンルだったりします。ユーザーからも同様のクレームが多く、メーカーとしては安さはそのままに、味を改善する必要に迫られたわけです。ここで出てくるのが第4のビールです。 ちなみに、ビールメーカーは第3のビールも第4のビールも合わせて"新ジャンル"と呼んでいるようです。第3とか第4はマスコミでの呼ばれ方です。 第3のビールは簡単に言うと、"麦芽は使えません。原材料は指定のものだけです"というお酒です。一方で第4のビールは"麦芽使用率50%未満の発泡酒に、スピリッツを混ぜてください"というお酒です。そう、ここでキーになるのが麦芽を含むか含まないか、なのです。第3のビールのまずさが、"麦芽のない味"に原因があるとみたメーカーは少しでも麦芽を含むことが出来る第4のビールを選び始めたのです。ゆえに、CMなどを見ていると麦芽の味にフォーカスを当てているんですね。 ですので、今回の第4のビールは決して安いわけではなく、商品によっては原価がかさみ5円ほど高かったりします。

ということで、ようやくこの課税のいたちごっこも終わるのかなーと思っていますが、いずれにしてもビールの税率の高さは解決してもらいたいものです。そして、安さを求めるばかりの商品開発も止めていただきたい。どんどん若い人がビールに寄り付かなくなっちゃうと思います。

とは言ってもね、って声が聞こえてきそうですが、、 (笑)

とあるお店で、ビールの価格がこのようになっていました。
ビール350ml缶×24 ¥4,385
発泡酒350ml缶×24 ¥2,825
第3のビール350ml缶×24 ¥2,585

これじゃあ、だいぶ違いますよね。若い人はコンビニで飲みたい時に1〜2本買うってことが多いと思いますが、家庭ではこういうまとめ買いはよくあることです。これだけ金額が違えばやっぱり安い方を買ってしまいます。となれば安い商品を美味しく作ろう、という話にもなりますよね。原材料を考えたらビール並みに美味しくは出来なくて当たり前なのに、各メーカーさん頑張っていると思います。